TEF/テスト技法
技法名 機能リストに基づく単機能確認テスト †
技法名(英語) single functional testing using function list †
説明 †
ブラックボックステスト技法の1つで、「単機能テスト」と呼ばれることもあります。本技法は、それぞれの機能を一つ一つ確認していくもので、組合せテストなどの前に実施します。
テスト設計方法は次のとおりです。
- 要件の分析
要件を分析し、レビューを実施する。
- 仕様書の分析
仕様書が要件を反映し満足していることを確認する。
- 仕様のリスト化
仕様書に書かれている機能を短文のリストに書き換える。機能とは、システムの目的を意味し「名詞+肯定の動詞」で表現できる。この時、動詞が複数含まれていないことをチェックする。もし、複数含まれていたらそれは複数の機能の場合が多いので分解できないか見直す。
- テストケースの作成
それぞれのテストについて、事前条件、入力、期待結果、事後条件を記述する。
使用例 †
Firefoxブラウザの[表示]メニューの[ズーム]についてのテストを考えてみます。
- 要件
- Web ページが小さ過ぎたり大き過ぎたりするときに、より見やすいサイズに変更する。
- 表示されている内容を拡大・縮小する。
- ズーム表示を通常のサイズに戻す。
- Web ページ全体をズームする代わりに、テキストのみを拡大・縮小する。
- 仕様書
- [表示]メニューの[ズーム]の中にある[拡大(I)]を選択するか[Ctrl++]で拡大する。
- [表示]メニューの[ズーム]の中にある[縮小(O)]を選択するか[Ctrl+-]で縮小する。
- [表示]メニューの[ズーム]の中にある[リセット(R)]を選択するか[Ctrl+0]でズーム表示を通常のサイズに戻す。
- [表示]メニューの[ズーム]の中にある[文字サイズだけ変更(T)]を選択することでズーム対象をテキストのみとする。本メニューはトグルで切り替わりメニューにチェックが入る。
というテストベースが与えられたとします(この要件、仕様書は架空のものです)。このときに「機能リストに基づく単機能確認テスト」は以下のようになります。
- 要件の分析
分析およびレビューにおいて、「表示されている内容を」とあるが、内容が表示されていないブランクページの場合、本機能が働くのか否かが記述されていないため完全性に問題があると指摘された。また、「テキストのみを拡大・縮小」とあるが、ボタンはどうなるのか?といった疑問が出た。レビューで確認したところ、ブランクページの場合は機能しない、ボタンについても拡大・縮小するとの要件であった。
- 仕様書の分析
全ての要件に対応する仕様があることを確認した。拡大・縮小機能についての上限・下限が仕様に無いこと、また、[文字サイズだけ変更(T)]について、Ctrlキーによるショートカットが必要か否か議論になった。Ctrlショートカットについては、使用頻度が低いことが想定されるため「無くて良い」との結論になった。
- 仕様のリスト化
仕様を表1のようにリスト化し番号を振った。
- テストケースの作成
仕様のリストへ事前条件、入力、期待結果、事後条件を記述しテストケースを作成した(表2に一例を示す)。
No. | 仕様 |
1 | メニューの[拡大]を選択することで表示内容が拡大する |
2 | ショートカットキーの[Alt+VZI]で表示内容が拡大する |
3 | ショートカットキーの[Ctrl++]で表示内容が拡大する |
4 | 拡大し続けると拡大が止まる |
5 | メニューの[縮小]を選択することで表示内容が縮小する |
6 | ショートカットキーの[Alt+VZO]で表示内容が縮小する |
7 | ショートカットキーの[Ctrl+-]で表示内容が縮小する |
8 | 縮小し続けると縮小が止まる |
9 | メニューの[リセット]を選択することで拡大・縮小表示を通常のサイズに戻す |
10 | ショートカットキーの[Alt+VZR]でズーム表示を通常のサイズに戻す |
11 | ショートカットキーの[Ctrl+0]でズーム表示を通常のサイズに戻す |
12 | メニューの[文字サイズだけ変更]を選択することでズーム対象がテキストのみになる |
13 | ショートカットキーの[Alt+VZT]でズーム対象がテキストのみになる |
14 | [文字サイズだけ変更]メニューはトグルになっている |
項目 | 内容 |
No. | 1 |
仕様 | メニューの[拡大]を選択することで表示内容が拡大する |
事前条件 | Firefoxを起動し、test-01.htmファイルを開く |
入力 | マウスを利用し[表示]メニューから[ズーム]→[拡大]を選択する |
期待結果 | 表示内容が拡大する |
事後条件 | メニューが閉じていること |
補足 †
このテスト技法は、技法というほどのものではありませんが、ブラックボックステストの基本となるもので、テスト設計の流れは共通に利用できます。組合せテストではこの結果を元に、論理の組合せと入力の組合せをテストします。
参考文献 †
書籍: 実践的プログラムテスト入門
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